「離婚したら、夫の年金の半分がもらえるんでしょう?」
——そう思っていらっしゃいませんか。
そう思っていた方は、決してあなただけではありません。
ボクも以前は同じように勘違いしていました。
実は、離婚の年金分割には大きな落とし穴が3つあります。
分けられるのは年金の一部だけ。
分けるのは「金額」ではなく「記録」。
そして、請求には期限があります。
今すぐ離婚のご予定がない方も、知っておくだけで、いざというときの安心につながりますよ。
気になるところだけ読んでも大丈夫です。
離婚の年金分割は「半分もらえる」ではありません|まず知りたい3つの結論

ボクのところに、50代後半の女性からご相談が届きました。
「夫から経済的DVを受けています。離婚を考えているので、年金分割の仕組みを教えてください」という内容です。
経済的DVとは、生活費をまったく渡さない、渡しても月1万円など暮らせない額しか渡さない、といった状態を指します。
生活費を渡してもらえない毎日が、どれほど心細いか。
ご相談の文面を読みながら、ボクも胸が痛くなりました。
だからこそ、あいまいな期待ではなく、正しい仕組みをお伝えしたいと思います。
先に、離婚の年金分割の結論を3つお伝えしますね。
- 分割できるのは厚生年金だけ
- 分けるのは金額ではなく「記録」
- 請求には期限(時効)がある
細かい制度を全部覚える必要はありません。
「こういう仕組みがあるんだな」と知っておくだけで十分ですよ。
【ポイント①】年金分割の対象は厚生年金だけ|基礎年金は分けられません

年金は2階建てとよく言われます。
1階が基礎年金(国民年金)、2階が厚生年金です。
分割の対象になるのは、2階の厚生年金の部分だけ。
正確には「報酬比例部分」と呼ばれるところです。
1階の基礎年金は、分けることができません。
年金分割でいくらもらえる?受給額のイメージ
たとえば、受け取る年金が月17万円ほどの方がいたとします。
そのうち、基礎年金にあたる7万円ほどは対象外です。
残りのおよそ10万円の部分が、分割の話になります。
ただし、年金の平均額も基礎年金の満額も毎年改定されます。
あくまで概算のたとえとしてお読みくださいね。
最新の数字は日本年金機構の公式サイトでご確認ください。
「思っていたより少ないのね」と先に知っておくほうが、あとでがっかりせずに済みます。
【ポイント②】年金分割で分けるのは「金額」ではなく「記録」です

ここが、いちばん誤解の多いところです。
受け取る年金額を2で割って渡す仕組みではありません。
分けるのは、婚姻期間中の「記録」です。
正確には標準報酬(給料や賞与の記録)のことですね。
記録が移ることで、将来受給する年金額に反映される、という流れになります。
「加入期間を分け合う」と説明されることもあります。
イメージとしては近いのですが、厳密には加入期間そのものを分け合う制度ではありません。
分割で受け取った記録は、年金を受給する資格に必要な10年の期間には算入されない点もご注意ください。
冷蔵庫の残り物を半分こするようなイメージで捉えると、少しズレてしまうんです〜。
そして記録は、年金が多い人から少ない人へ移ります。
妻のほうが厚生年金が多ければ、妻から相手へ移ることもあります。
これは要注意!!
離婚の理由も問われません。
浮気や不倫があったから多くもらえる、という制度ではないのです。
年金分割の方法は2種類|「合意分割」と「3号分割」の違い

分割の方法は2つあります。
合意分割は、夫婦で話し合って分割の割合を決める方法です。
話がまとまらない場合は、家庭裁判所で決めることになります。
3号分割は、会社員や公務員の配偶者に扶養されていた方が使える方法です。
いわゆる第3号被保険者、専業主婦やパート勤務の方ですね。
相手の同意がなくても請求でき、半分ずつに分けられます。
経済的DVのように、相手が話し合いに応じそうにないケースでは、3号分割が大きな支えになります。
ご自身がどちらに当てはまるかは、これまでの働き方によって変わります。
扶養に入っていた期間があるかどうかがポイントです。
年金事務所で確認するのがいちばん確実ですよ。
3号分割は「2008年4月以降」が対象|いつからの記録が分けられる?

相手の同意なく半分に分けられるのは、2008年4月以降の記録に限られます。
2008年4月より前の期間は、合意分割(相手の同意または裁判所の判断)が必要です。
たとえば結婚して30年の方でも、同意なく分けられるのはおよそ18年分ほど。
残りの期間は、話し合い次第ということになります。
「思っていたほど多くはないのね」と感じられるかもしれません。
そんな声を本当によく聞きます。
でも、18年分は決して小さくない記録ですよ。
【ポイント③】年金分割の請求はいつまで?原則は離婚の翌日から2年以内

現行の原則は、離婚などをした日の翌日から2年以内に請求を済ませることです。
期限を過ぎると、請求できなくなってしまいます。
離婚後は、住まいの手続きや荷物の整理で毎日があっという間に過ぎていきます。
2年は、本当にすぐですよ。
なお、請求期限を5年に延長する見直しが議論・報道されています。
ただし、施行の時期や「いつ離婚した人から対象になるのか」といった適用の範囲は、結論を大きく左右します。
延長の話は、必ず公式情報でご確認くださいね。
「延長されるらしいから急がなくていい」——ボクは、その考え方はあまりオススメしません!
まずは2年を前提に、早めに年金事務所へ相談してくださいね。
年金分割の手続きはどこで?最新情報は日本年金機構・年金事務所で確認を
ここで正確に整理しておきますね。
記事に出てきた年金額はあくまで概算のたとえです。
年金額は毎年改定されます。
請求期限の延長についても、施行日や経過措置の内容は日本年金機構や厚生労働省の公式サイトで最新の内容をご確認ください。
手続きに必要な「年金分割のための情報通知書」は、年金事務所で請求できます。
まずは、ご自身がどれだけ分割の対象になるのかを調べるところから始められますよ。
事情は人それぞれ違います。
年金事務所や弁護士など、専門家に相談することをおすすめします。
離婚の予定がない方こそ、年金分割を知っておいてほしい理由
細かい制度を覚える必要はまったくありません。
- 年金は記録を分けられる
- 相手が拒んでも分けられる場合がある
- 請求には期限がある
3つだけ、頭の片隅に置いておけば十分です。
全部やらなくて大丈夫ですよ。
ご自身のためだけでなく、周りで悩んでいる方にそっと教えてあげられる知識にもなります。
離婚の年金分割は、「夫の年金の半分がもらえる魔法」ではありません。
分けられるのは厚生年金の部分だけ。
分けるのは金額ではなく記録。
そして請求には期限があります。
知らないことが悪いのではありません。
知らないまま期限が過ぎてしまうのが、もったいないのです。
年金は申請主義です。
知って動いた方だけが受け取れます。
今すぐ関係のない方も、心の引き出しにしまっておいてくださいね。
※ 年金分割などの制度は改正されることがあります。最新の情報は日本年金機構の公式サイトでご確認いただき、個別のご判断は専門家にご相談ください。

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