
「年金はいつからもらうのが一番トクなのかしら」——
年に一度届く『ねんきん定期便』を眺めながら、そう思ったことはありませんか。
そんな声を本当によく聞きます。
60歳から早めにもらうか、65歳を待つか、70歳・75歳まで我慢して増やすか。
しかも繰り上げは、一度決めたら取り消せません。
今日はボクが、自分の母に話すつもりで「損益分岐点」と3つの落とし穴をお伝えしますね。
年金はいつからもらう?60歳〜75歳で選べる受給開始年齢の基本ルール

ここで正確に整理しておきますね。
年金は原則65歳から受け取ります。
60歳まで早める「繰り上げ」も、75歳まで遅らせる「繰り下げ」もできます。
繰り上げは1か月あたり0.4%の減額、繰り下げは1か月あたり0.7%の増額です。
ただし繰り上げの0.4%は2022年4月の改正後の率です。
1962年4月1日以前に生まれた方は、従来どおり1か月0.5%減(60歳で30%減)が適用されます。
ご自身の生年月日を、まず確認してみてください。
そして大事な点がひとつ。
繰り上げ請求は、あとから撤回・取り消しができません。
一方、繰り下げは「待機中」であれば、65歳にさかのぼって一括で受け取る選択もできます。
2023年4月からは、70歳以降に請求する場合の「5年前みなし繰下げ」(5年前に繰り下げ請求したとみなして計算するしくみ)も始まりました。
つまり繰り下げは「取り消せない」とは言い切れないのです。
年金は何歳からもらうといくら?月16万円のケースで受給額を試算

モデルは花子さん、58歳・独身・東京在住。
年金の予定額は月16万円とします。
(住む場所は税や保険料に関わるので、あえて設定しています)
- 60歳から:−24%で約12万円
- 65歳から:16万円
- 70歳から:+42%で約22万7,000円
- 75歳から:+84%で約29万円
60歳受給だと月4万円減、1年で約48万円のマイナスです。
逆に75歳まで待てば、ほぼ倍近くになりますね。
数字だけ見ると「待ったほうがいいのかしら」と思いますよね〜。
年金の損益分岐点はいつ?繰り上げは「+21歳」繰り下げは「+12歳」が目安

損益分岐点とは、65歳から受け取った場合の総額に追いつく年齢のことです。
繰り上げは、受給開始年齢+21歳が目安。
60歳受給なら81歳、64歳受給なら85歳です。
それより長生きすると、総額では損になります。
繰り下げは、受給開始年齢+12歳が目安。
66歳受給なら78歳、70歳受給なら82歳、75歳受給なら87歳です。
それより前に亡くなると、待った分が報われません。
いずれも端数を丸めた概算です(正確には80歳10か月など)。
参考までに、厚生労働省の簡易生命表では男性は概ね81歳台、女性は87歳台。
ただし65歳まで生きた方の平均余命で見ると、男女とも85歳前後まで生きる計算になります。
平均寿命だけで決めないでくださいね。
落とし穴①|手取りで見ると年金の損益分岐点は2〜3歳うしろにずれる

よく見る損益分岐点は、実は「額面」の話です。
年金からも所得税・住民税・国民健康保険料・介護保険料が引かれます。
手取りで計算すると、繰り上げの分岐点は「+21歳」ではなく「+23歳」あたりへ。
60歳受給なら83歳です。
つまり「もっと長生きしないと元が取れない」構図になります。
あくまで東京在住・月16万円という条件での概算です。
年金額・地域・世帯構成・その年の控除額で大きく変わります。
公的年金等控除や基礎控除は近年も見直されていますので、ご自身の数字は年金事務所で試算してもらってください。
そして何歳まで生きるかは、誰にも選べません。
ここは読者のみなさんと共有しておきたい前提です。
落とし穴②|インフレで「待って増やした年金」の価値は目減りする
3年ほど前は激安だった板チョコが、今は約200円。
10万キロ走った中古のコンパクトカーが、60万円から100万円になった、という話も聞きます。
デフレは現金の価値が高い時代、インフレは同じ1万円で買えるものが減っていく時代です。
60歳でもらう12万円と、5年後の16万円。
「買えるもの」で比べると、差は縮まる可能性があります。
年金は現金でしか受け取れません。
だからこそ早めに受け取り、NISAなどインフレに強い資産へ換えるという考え方もあります。
ただし投資は元本保証ではありません!
生活費として必要なお金は、運用に回さないでくださいね!
落とし穴③|お金には「年齢」という有効期限があります

お金は、物やサービスと交換するチケットです。
そのチケットの有効期限が「年齢」だ、という発想があります。
冷蔵庫の奥で賞味期限が近づいている高級ジャムのようなもので、置いておくほど価値が下がるのです。
75歳から月29万円もらえても、世界一周を楽しむ気力と体力は同じではありません。
お金で引き出せる価値は、年齢とともに下がっていきます。
ベストセラー『DIE WITH ZERO』が伝えているのも、この視点です。
子どもが一緒に旅行してくれる期間にも、親が元気に動ける期間にも、限りがあります。
もし「毎月50万円あげます。ただし85歳まで外出できません」と言われたら、あなたはどうしますか。
たぶん、ほとんどの方が首を横に振ると思うんです。
60歳で行った旅行の思い出は、90歳まで30年間楽しめますよ。
年金の繰り上げ受給を選ぶ前に|減額以外の5つのデメリット

- 減額された年金額は生涯続き、あとから戻せない
- 原則として障害基礎年金を請求できなくなる
- 国民年金の寡婦年金(夫を亡くした妻が60〜65歳の間受け取れる年金)が受けられない(受給中なら権利が消滅)
- 国民年金への任意加入・保険料の追納(免除や猶予を受けた分を後から納めること)ができなくなる
- 老齢基礎年金と老齢厚生年金は原則として同時に繰り上げる必要がある
気になるところだけ読んでも大丈夫ですよ。
また60〜64歳で繰り上げながら働く期間は、在職定時改定(働きながら年金額が毎年増えるしくみ)の対象外になります。
「早くもらう=いいこと尽くし」ではない、ということですね。
ねんきん定期便には繰り下げの試算しか載っていません|受給額を調べる手続き

年1回届く「ねんきん定期便」に載っているのは、繰り下げで増える例だけです。
そのため「繰り下げるのが正解」と思い込みやすい構造になっています。
選択肢は、繰り上げ・65歳・繰り下げの3つ。
それを知っておくだけで、判断の幅が広がります。
繰り上げた場合の金額も、ねんきんネットや年金事務所で試算してもらえますよ。
年金制度は変わります|受給の手続き前に最新情報の確認を
繰り上げの減額率は生年月日で異なります。
繰り下げのルールも2023年4月の改正など、近年も動いています。
公的年金等控除・基礎控除・社会保険料率も毎年見直される可能性があり、手取りの分岐点も動きます。
本記事は執筆時点の情報です。
最新の内容は日本年金機構の公式サイトでご確認くださいね。
年金をいつからもらうか決める前の3つのチェックポイント

- 60代前半に働く予定や、ほかの収入がありますか(あるなら繰り下げも現実的です)
- 健康状態やご家族の寿命傾向、「元気なうちにやりたいこと」はありますか
- ご自身の生年月日と減額率、繰り上げのデメリットは自分に関係しますか
生活が苦しくて繰り上げるのと、使い道が決まっていて繰り上げるのは、意味がまったく違います。
全部いっぺんに決めなくて大丈夫です。
まずはねんきん定期便を開いてみる、それだけで十分な第一歩ですよ。
まとめ|年金は何歳から受け取るのが正解?答えは人それぞれです
損益分岐点は、額面だけで見ると判断を誤りやすいものです。
手取りで見れば2〜3歳うしろへずれます。
さらにインフレと年齢という、2つの「目減り」もあります。
ボク自身は、元気なうちにお金を使える繰り上げに魅力を感じています。
ただ繰り上げには、障害基礎年金や寡婦年金が使えなくなるなどの不利益があります。
家計の状況によっては、繰り下げが正解になる方も当然いらっしゃいます。
決められないのが悪いのではありません。
知らないまま決めてしまうのが、もったいないのです。
ぜひ一度、あなたの数字で試算してみてください(年金事務所は予約相談が安心です)。
あなたは、年金を何歳から受け取りたいですか。
よかったらコメントで教えてくださいね。
※ 年金の繰上げ・繰下げなどの制度は改正されることがあります。最新の情報は日本年金機構の公式サイトでご確認いただき、個別のご判断は専門家にご相談ください。
▼ 元の動画はこちら
【知らないと損】年金いつもらうのが正解?60歳・65歳・70歳の「手取り」でいくら受け取れるか?完全公開【損益分岐点】

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