
「会社がやってくれるものだと思っていました」——
そんな声を、本当によく聞きます。
60歳になると、年金も健康保険も、いくつもの制度が同時に変わります。
ところが、60歳からの年金・健康保険の手続きについて、親切なお知らせが届くわけではありません。
会社がしてくれるのは「雇用」の手続きだけです。
将来のお金の手続きは、誰も代わりにやってくれません。
気づかないまま通り過ぎると、もう戻せないものもあります。
でも、60歳になる前ならまだ間に合いますよ。
60歳で変わる年金・健康保険は6つ|「扶養」を分けて考えるのがコツ

まずは全体像から見てみましょう。
- ①年金の扶養(第3号被保険者)から外れる
- ②定年退職では国民健康保険の軽減が使えない
- ③健康保険の扶養の壁が180万円未満に緩和される
- ④同日得喪で社会保険料がすぐ下がる
- ⑤高年齢雇用継続給付金がもらえることがある
- ⑥在職老齢年金(年金カット)の基準
気になるところだけ読んでも大丈夫ですよ。
①〜③は退職して無職やパートになる方、④⑤は同じ会社で再雇用される方、⑥は60代でしっかり稼ぐ方に関係します。
混乱の最大の原因は、「扶養」という言葉が2種類あることです。
年金の扶養と、健康保険の扶養。
2つを分けて読むだけで、一気にスッキリしますよ〜。
【変化①】60歳で年金の扶養(第3号被保険者)から外れる|任意加入という選択

第3号被保険者とは、会社員や公務員の配偶者の扱いのことです。
自分では年金保険料を払っていないのに、国民年金に加入しているのと同じ効果が得られる仕組みですね。
ここでポイントを正確に整理しておきますね。
国民年金は、20歳から60歳までの40年間に加入します。
ですから第3号被保険者も、60歳で終了します。
健康保険の扶養は続いても、年金の扶養は外れる。
違いを覚えておいてください。
年金の扶養から外れても、すぐに困ることはありません。
ただし、過去に免除期間や未納期間がある方は要注意です。
学生時代の免除、出産や育児のころの未納。
心当たりのある方は、決してあなただけではありません。
免除や未納がある方にぜひ知ってほしいのが「国民年金の任意加入」です。
60歳以降もあえて国民年金に加入して、年金額を増やす制度ですね。
保険料はおおむね月1万8千円前後ですが、年度ごとに改定されます。
最新の額は日本年金機構の公式サイトでご確認くださいね。
受け取り始めておよそ10年で、払った分が戻るのがざっくりした目安です。
65歳受給開始なら、75歳ごろですね。
ただし保険料も年金額も改定されるため、あくまで概算としてお考えください。
【変化①の続き】夫が定年退職したら、妻の年金手続きも14日以内に自分で
夫が定年退職して無職になると、夫は第2号から第1号被保険者に変わります。
連動して、妻も自分で第1号への切り替えが必要になります。
再雇用で働き続ける場合は当てはまりません。
会社がやってくれるのは、夫の分までです。
妻の切り替えは、自分で役場へ行くしかありません。
一番忘れやすいポイントですよ。
妻の切り替えの期限は14日以内です。
放置すると国民年金が未納扱いになり、将来の年金額が減ってしまいます。
しかも「未納ですよ」と教えてくれる通知は来ません。
妻が年下でまだ60歳未満なら、国民年金保険料の支払いも発生します。
家計の見通しに入れておきましょう。
【変化②】定年退職だと国民健康保険の軽減が使えない|保険料はいくら?

国民健康保険料の軽減は、倒産や解雇など「自分の意思とは関係なく職を失った場合」が対象です。
再雇用を希望したのに断られた場合も対象になります。
ところが定年は、あらかじめ予定されていたもの。
ですから定年退職は国民健康保険料の軽減の対象外です。
「退職すれば安くなるはず」と思い込んでいる方は、本当に多いのです。
さらに国民健康保険料は、前年の所得で計算されます。
退職1年目は現役時代の給料をもとに計算されるため、高額になりがちです。
ボクの先輩は、退職後におよそ50万円の請求書が届いて驚いていました。
今までは給料からの天引きで、痛みを感じにくかったのですよね。
国民健康保険料が突然、請求書としてポストに届くわけです。
退職後の健康保険の手続きは3択|扶養>任意継続>国保の順に比較

ベストは、お子さんなど親族の健康保険の扶養に入ることです。
保険料が0円になりますので、可能なら最優先で検討してください。
次に検討したいのが「任意継続」です。
今まで入っていた健康保険に、最長2年間続けられる仕組みですね。
給付の手厚さが残り、家族を扶養に入れられるのも大きな利点です。
国民健康保険は、1人ずつ保険料がかかりますからね。
任意継続の注意点は、会社が負担していた半分がなくなることです。
保険料は単純に2倍になります。
それでも国民健康保険と同額か、やや安くなるケースは多いですよ。
結論は、任意継続と国民健康保険の両方の金額を出して比べること。
任意継続の保険料が国民健康保険と同額か少し高い程度なら、手厚さと扶養が使える任意継続がおすすめです。
国民健康保険料は市区町村の窓口、任意継続の保険料は加入中の健康保険組合や協会けんぽで教えてもらえます。
50代のうちに聞いておくと安心ですね。
【変化③】健康保険の扶養は60歳から180万円未満に|いくらまで働ける?

健康保険の扶養に「入る側」の収入基準は、通常130万円未満です。
ところが扶養に入る側が60歳になると、180万円未満に上がります。
ここは分かりにくいので、もう一度書きますね。
判断されるのは、扶養に入る側の年齢です。
夫が50歳、妻が60歳でも、妻の年齢で180万円未満が適用されます。
基準額が上がる理由は、60歳から年金を受け取れる可能性が出てくるからです。
年金も収入としてカウントされるため、基準額が引き上げられているのですね。
年金をまだ受け取っていない方でも、60歳になれば180万円未満が適用されます。
ちょっと嬉しい変更ですよね!
注意点は、年金とパート収入などの合計で判定されること。
そして、控除を引く前の収入で見ることです。
なお2026年4月から、被扶養者認定の判定方法が見直されています。
労働契約書の年収見込みで判定する扱いになりました。
基準額そのものは変わっていません。
最終判断は、加入している健康保険組合や協会けんぽに確認してくださいね。
【変化④】同日得喪で社会保険料がすぐ下がる|再雇用される方の手続き
社会保険料は、3か月間の給料の平均で決まります。
4月から6月の給料で決まる、というお話を聞いたことはありませんか。
給料が変わってから反映されるまで、時間差がある仕組みですね。
困るのは、再雇用で給料が下がったときです。
通常なら3か月間は、高いままの社会保険料が天引きされてしまいます。
そこで使えるのが「同日得喪」です。
退職日と再雇用日を同じ日として扱い、下がった給料ですぐ計算し直してもらえます。
60歳以降、同じ会社で再雇用される場合に使える仕組みです。
同日得喪が使えるのは、1日も空けずに再雇用される場合。
3月31日退職、4月1日再雇用というパターンですね。
別の会社に移る場合や、定年が65歳の会社では必要ありません。
手続きは会社が行いますが、漏れることもあります。
給料が下がる方は「同日得喪の手続きはされていますか」と確認しておくと安心ですよ。
【変化⑤】高年齢雇用継続給付金はいくら?給料が75%未満に減ったとき

60歳時点の給料と比べて75%未満、つまり25%以上減った場合に支給される制度です。
対象は60歳から65歳までの5年間です。
例を挙げますね。
60歳で月30万円だった方が、再雇用で月18万円(60%)になったとします。
最大10%にあたるおよそ1万8,000円が上乗せされ、合わせておよそ19万8,000円になります。
支給率の上限は、かつての15%から10%に引き下げられました。
ただし引き下げは一定日以降に60歳に到達した方から適用されます。
いつ60歳になったかで率が異なる場合がある、と覚えておいてください。
高年齢雇用継続給付金は縮小の方向で見直しが進んでいます。
正直なところ、あまり期待しすぎないほうがいいと思います!
もらえたらラッキー、くらいの気持ちでちょうどいいですよ。
手続きは会社が行いますが、小さな会社では漏れることもあります。
制度の存在を知っておくこと自体が、立派な防衛になりますね。
【変化⑥】在職老齢年金は月いくらから減額?昔の28万円の記憶のままだと損

働きながら年金を受け取る方の年金が減額される仕組みです。
2026年度の基準は月65万円です。
基準は、かつての28万円(65歳未満に適用されていた旧基準)から、47万円、51万円と、ざっくり緩められてきました。
昔の基準のまま覚えていると、本当はもっと働けたのに収入をセーブしてしまうかもしれません。
もったいないですよね。
注意点は2つです。
1つ目は、計算に含まれるのが厚生年金部分と給与であること。
基礎年金は含みません。
国民年金だけの自営業の方は、対象外です。
2つ目は、繰り下げ待機中でも計算はされること。
増えるはずの増額分が目減りすることがあります。
年金・健康保険の数字は毎年変わる|手続きの最終確認は年金事務所へ
国民年金保険料も、在職老齢年金の基準額も、毎年度改定されます。
記事の数字は、あくまで目安として読んでくださいね。
健康保険の扶養判定は、加入している健康保険によって取り扱いが分かれます。
確認先を整理しておきます。
- 年金の受給や手続きのこと……年金事務所、ねんきんネット
- 国民健康保険……市区町村の窓口
- 任意継続と扶養……加入中の健康保険組合・協会けんぽ
- 雇用継続給付……ハローワークと勤務先
窓口で聞くのは、恥ずかしいことではありません。
知らないまま損をするほうが、ずっともったいないのです。
まとめ|60歳前にしておきたい年金・健康保険の手続きは3つだけ
60歳で変わる制度は多いですが、押さえるべきは3つです。
1つ目は、年金の扶養と健康保険の扶養は別物だということ。
2つ目は、夫の退職にともなう妻の切り替えは、自分で14日以内に行うこと。
3つ目は、退職後の健康保険は任意継続と国民健康保険の両方を比べること。
どれも、知っていれば数十万円単位で結果が変わることもあります。
それなのに、誰も教えてくれませんし、通知も来ません。
年金や健康保険は「申請主義」で、知って動いた人だけが受け取れる仕組みなのです。
全部やらなくて大丈夫です。
ねんきん定期便で免除・未納期間を見てみる。
加入している健康保険に、任意継続の保険料を聞いてみる。
1つだけでも動けたら、それが第一歩ですよ。
あわてなくて大丈夫!
60歳になる前に気づけたあなたは、もう十分に早いのですから。
※ 在職老齢年金などの制度は毎年見直されることがあります。最新の情報は日本年金機構などの公式サイトでご確認いただき、個別のご判断は専門家にご相談ください。

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