
「定年後の手続きは、きっと会社が全部やってくれる」——そう思っていませんか?
実は、定年後の手続きには、自分から動かないと受け取れないお金や、申告書たった1枚で手取りが大きく変わる制度がいくつもあるんです。
定年は誰にとっても人生初めての経験。何をどの順番で確認すればいいのか、不安になって当然ですよね。
でも、知らないだけで30万、50万円と損してしまうこともあるのです。
今日は、おかんに話すつもりで、定年前に知っておきたい5つの制度を、時系列に沿ってやさしくお伝えしますね。
なぜ定年前に年金・公的制度の手続きを確認すべきなの?
今は男性も女性も、半数以上の人が定年後も働いている時代です。
そこでこの記事では、「再雇用してから退職する」という一般的な流れを想定してお話しします。
5つの制度に共通しているのは、大きなお金は自分から申請しないともらえないという点です。
時系列で並べると、次のようになります。
- 【再雇用時①】高年齢雇用継続給付金
- 【再雇用時②】経過的加算
- 【退職時】退職所得の受給に関する申告書
- 【退職後①】健康保険の切り替え
- 【退職後②】失業保険のもらい方
それでは、ひとつずつ見ていきましょう。
【再雇用時①】高年齢雇用継続給付金は賃金が下がったら申請
最初は「高年齢雇用継続給付金(再雇用で賃金が下がったときの穴埋めになる給付金)」です。
60歳からの制度で、対象となる条件は3つあります。
- 60歳以降も働いていること
- 60歳時点の賃金の75%未満に下がったこと
- 雇用保険に通算5年以上入っていること
たとえば月収30万円だった方が18万円に下がった場合、月約1万8,000円、年にして20万円以上のプラスになります。
ただし支給には上限額があり、毎年8月に改定されます。個別の金額は必ずご確認ください。
そして注意したいのが、2025年4月から給付率が15%→10%に下がったことです。
今後さらに減額・廃止される可能性もあります(2025年時点の情報です。最新情報は公式サイトでご確認ください)。
この給付金は自動では振り込まれません。
会社と連絡を取り、ご自身でハローワークへ申請する必要があります。
【再雇用時②】経過的加算で年金を取り返すしくみ

2つ目は「経過的加算」です。
結論から言うと、厚生年金を払い続けると、国民年金の免除・未納だった部分を取り返せる仕組みです。
前提として大切なのは、厚生年金の保険料には国民年金分も含まれているという点です。
実は私も勉強を始めた頃はこれを知らず、「国民年金を払っていない」と焦った経験があります。
たとえば、大学在学中(20〜24歳)に年金を免除していた人がいたとします。
この場合、4年分が減った状態になりますが、60歳以降も働けば満額に近づけられるのです。
特に学生時代に年金を免除していた方は、60歳以降も厚生年金に入るメリットが大きいですよ。
なお、20歳から60歳まで40年きっちり働いた方には「44年特例」という別の制度も用意されています。
【退職時】退職所得の受給に関する申告書1枚で税金がゼロに
退職金がある会社にお勤めの方は、これがいちばん大事かもしれません。
「退職所得の受給に関する申告書」——この1枚を出すだけで、退職金にかかる税金がぐっと下がり、多くの場合ゼロになります。
もし出さないと、退職金の支給額全額に20.42%(復興特別所得税込み)もの税金が引かれてしまうのです。
税金を抑えるしくみは「退職所得控除」といいます。計算方法はこうです。
- 勤続20年以下:年数×40万円
- 勤続20年超:800万円+(20年を超えた分×70万円)
具体例を見てみましょう。
- 勤続15年なら退職金600万円まで非課税
- 勤続30年なら1,500万円まで非課税
- 勤続38年なら2,060万円まで非課税
控除を超えた場合でも、超えた分の2分の1が課税対象になるだけです。
ただし勤続5年以下の短期退職手当など(超えた分が300万円を超える部分など)には例外がありますので、ご注意ください。
うっかり出し忘れても、5年以内なら申告で取り戻せます。ぜひ覚えておいてくださいね。
【退職後①】健康保険の切り替え手続きはどう選ぶ?

退職後は必ず健康保険に入り直します。選択肢は3つあります。
- 扶養(保険料0円だが条件が厳しい)
- 任意継続(会社の保険を続ける)
- 国民健康保険(前年所得で決まる)
いちばんお得なのは扶養で、保険料が0円です。
ただし条件が厳しく、60歳以上は年収180万円未満が目安(60歳未満は130万円未満)。健保組合により基準が異なります。
任意継続は、会社が半額負担していた分が全額自己負担になりますが、上限があります。
おすすめは、1年目は任意継続、2年目に国民健康保険へ切り替える方法です。
国民健康保険は前年所得で決まるため、退職1年目は高く、2年目からぐっと安くなるからです。
私の先輩は、1年目約50万円だった保険料が、2年目に切り替えて15万円まで下がり、35万円も節約できました。
【退職後②】失業保険はいつ退職?64歳と65歳でもらい方が大違い
最後は失業保険です。結論、金額を取るなら64歳で退職、手間をかけたくないなら65歳で退職です。
64歳で退職すると、通常の失業手当が使えます。20年以上勤務なら最大150日分(約5ヶ月分)です。
デメリットは、約5ヶ月ハローワークに通い、就職活動が必要なことです。
一方、65歳以降は「高年齢求職者給付金」となり、30日または50日分に減ります。
ただし一括でもらえて、要件を満たせば繰り返し受給も可能です(都度、被保険者期間や失業状態の要件を満たす必要があります)。
なお、64歳退職なら受給期間を最大2年間まで延長できます。
ただし離職日の翌日から一定期間内(原則として離職日翌日から2か月以内など)の申請手続きが必要ですので、早めにハローワークでご確認ください。
年金・公的制度は毎年変わる|必ず最新情報を確認しましょう
ここまで5つの制度をご紹介しました。
ただし、給付率・控除額・扶養の基準・給付日数などは、法改正や年度によって変わります。
特に高年齢雇用継続給付は、将来的に廃止・減額される可能性があります(2025年時点の情報です)。
個別の金額や条件は、ハローワーク・日本年金機構・年金ダイヤル・加入している健保組合など、公式窓口で確認するのが確実です。
なお、年金が難しくてわからないという方のために「年金の教科書」という本も作りました。よろしければ手に取ってみてくださいね。
まとめ|定年後の手続きは知っているだけで手取りが変わる
定年後の手続きは、会社や役所が「あなたにはこの権利がありますよ」とは教えてくれません。
だからこそ、知っているかどうかで手取りに何十万円もの差がつきます。
今日ご紹介した5つのうち、特に『退職所得の受給に関する申告書』と『健康保険の切り替え』は、たった一手間で大きく変わるポイントです。
まずは、自分がどの時期にどの制度に当てはまるかを確認してみましょう。
迷ったら、遠慮なく公式窓口に相談してみてください。
知ることが、あなたの大切なお金を守る第一歩になりますよ。
※ 本記事の年金・税・社会保険に関する金額や条件は制作時点の情報に基づいています。給付率・控除額・扶養基準・支給要件などは法改正や毎年の改定で変わることがあり、支給上限額や個別の受給資格は事情により異なります。実際の手続きの際は、日本年金機構・ハローワーク・お住まいの市区町村・ご加入の健康保険・税務署など公的窓口で最新かつ個別の条件をご確認ください。

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