「まだ元気だし、もう少し働こうかしら」——定年後も働くと年金はどうなるのか。
いくら増えるのかが気になっている方、あるいはご主人が定年後も働いているという方に、ぜひ読んでいただきたいお話です。
国は「50代・60代は貴重な人材です、長く働いてください」と言います。
でもその言葉だけを受け取って働きはじめると
「年金は増えたのに手取りは思ったほど増えなかった」
「住民税非課税世帯から外れて給付金がもらえなくなった」
ということが起こります。
働くことが悪いのではありません。
知らないまま働くのがもったいないのです。
定年後も働くと年金はどうなる?知らないまま働くと損をする理由
今は65歳を過ぎても過半数の方が働いています。
また「働けるうちは働きたい」という方もたくさんいらっしゃいます。

シニアの方が持つ経験値は、20代の方には出せない本当に貴重です。
ボクもできるだけ長く働きたいと考えています。
ですから、働くこと自体は大賛成です。
ただ、年金・雇用保険・住民税の制度は「知っている人だけが得をする」つくりになっています。
ぜひ知っておくべき制度について、知識を持っておいてください。
厚生年金が毎年増える「在職定時改定」はいつから?いくら増える?

昔は、退職するまで厚生年金の額が増えませんでした。
5年働いても年金は据え置き。働き損のように感じられたのです。
今は9月1日を基準日として、毎年10月分から年金額が見直されます。
これが在職定時改定(働きながら毎年年金が増える仕組み)です。
月収20万円で1年働くと年およそ1.3万円、5年でおよそ6万円以上のアップが目安です(あくまで概算です)。
ここで大事な注意点があります。
在職定時改定の対象は「65歳以上70歳未満」で厚生年金に加入しながら年金を受け取っている方です。
60〜64歳で繰上げ受給しながら働いている期間は対象外で、退職時または65歳時点の改定でまとめて反映されます
つまり「繰上げしていても毎年増える」のは、65歳以降の話ですね。
年金の繰上げ受給の減額率は年4.8%|在職老齢年金にも注意

繰下げ(受給を遅らせること)は1年で8.4%増、5年で42%増、ほぼ1.5倍になります。
一方、繰上げの減額率は1か月0.4%=年4.8%です(1962年4月2日以降生まれ)。
そして繰上げは、減った金額が一生続きます。
また働きながら受け取る方は「在職老齢年金」にも注意です。
年金の基本月額と総報酬月額相当額の合計が支給停止調整額(2026年度は62万円)を超えると、老齢厚生年金の一部または全部が止まります。
→年金カットについてはYouTubeで解説しています
働き方を決める前に、年金事務所で試算してもらうと安心です。
介護休業給付金は家族1人につき93日分|働き続けるメリット

50代以上でいちばん現実味があるのは「親の介護で仕事を休む」場面ではないでしょうか。
介護休業給付金は、家族1人につき通算93日分、休業前の賃金日額のおよそ67%が支給されます。
退職してしまうとこの給付金制度は使えません。
これは働き続けることの、見えにくい大きなメリットです。
「もし親が倒れたら」を想定して、勤務先で雇用保険に加入しているか一度確認しておきましょう。
60歳以降に給料が下がったら|高年齢雇用継続給付の受給と注意点
60歳以降の再雇用で賃金が60歳時点の75%未満に下がったとき、賃金の一定割合が上乗せされる制度です。
上限率が15%から10%に引き下げられたのは「2025年4月1日以降に60歳になる方」からです。
それ以前に60歳を迎えている方は、引き続き最大15%が適用されます。
しかもこれは上限で、賃金が61%以下まで下がったときに上限が適用され、それ以外は金額が少なくなります。
この制度は今後さらに縮小・廃止の方向です。
生年月日で扱いが変わりますので、ハローワークか勤務先にご確認ください
(2025年時点の情報です。最新情報は公式サイトでご確認ください)。
退職はいつがいい?「64歳11か月」がおすすめと言われる理由
65歳の誕生日前日を境に、受け取れる失業給付の種類が変わります。
- 65歳より前に退職 → 基本手当(失業手当)。勤続年数によっては150日分など
- 65歳以降に退職 → 高年齢求職者給付金。30日分または50日分の一括支給
つまり64歳11か月で退職すれば、失業手当を受けながら65歳から年金も受け取れる可能性があるのです。
ただし60〜64歳で繰上げ受給していると、失業手当との調整で年金が止まります。
順番がとても大事ですね。
退職日は1日ずらせることもありますので、勤務先とハローワークに事前相談を。
デメリット①:年金が増えても手取りは同じだけ増えません

年金額が増えると、国民健康保険料・介護保険料・住民税・所得税の負担も一緒に増えます。
月14万円の年金の一例では、国民健康保険料が月6,000〜7,000円増えます。
また、介護保険料が月6,000円ほど、住民税が月数百円で、合計月1万3,000円ほど引かれるケースがあります。
ただしこれはあくまで一例です。
金額は自治体・世帯構成・年齢で大きく変わります。
年金収入168万円の単身者なら、社会保険料控除を引くと住民税が非課税になるケースも珍しくありません。
年金からの天引き(特別徴収)にも要件があり、全員が天引きされるわけではありません。
「額面が増えた=暮らしが楽になる」ではないのです。
ぜひ手取りで比べてくださいね。
デメリット②:211万円の壁とは?超えると非課税世帯から外れます

住民税非課税世帯になると、国民健康保険料・介護保険料の軽減や、臨時給付金の対象になるという実利があります。
ただし「全額免除」ではありません。
国民健康保険料は均等割・平等割の7割(5割・2割)軽減、介護保険料は第1段階で基準額のおよそ0.285倍までの軽減にとどまります。
0円になるのではなく「安くなる」のです。
ですから「年10万円×20年で200万円の差」という試算は、目安として大きめです。
それでも数万円単位の差が毎年続き、給付金の対象になるかどうかの差は大きい。これは事実です。
なお、この「211万円の壁」の金額は級地と世帯構成で変わります。
一級地・65歳以上夫婦2人で約211万円、単身は約155万円です。
一方、二級地の富山市なら約203万円などです。
あなたの住んでいるところは何級地ですか? こちらで確認しておきましょう
世帯分離という選択肢|住民税非課税世帯の判定を正しく知る
住民税の課税判定は個人単位です。「住民税非課税世帯」とは、世帯全員が住民税非課税である状態のこと。
世帯の収入を合算して判定するわけではありません。
ですから、同居する息子さんに所得があると、親御さん自身が非課税でも世帯としては非課税になりません。
そこで住民票上の世帯を分ける「世帯分離」(別居ではなく手続き上の分離)という方法があります。
ただし扶養から外れる、健康保険、高額療養費の合算などにデメリットもあります。
市区町村の窓口で相談してから判断するのが良いですね!
なお「年金を止めれば非課税世帯になれる」という話は誤解を招きやすいものです。
受給開始後に節税目的で自由に年金を止める仕組みは、一般的にはありません。
繰下げ(請求しないこと)や併給調整による支給停止の申出とは別物ですので、年金事務所でご確認ください。
定年後の働き方チェックリスト|今日からできる5つの確認

- ねんきん定期便で今の見込み額を確認する
- お住まいの市区町村が何級地か、非課税ラインはいくらかを調べる
- 生年月日で高年齢雇用継続給付の上限(10%か15%か)を確認する
- 退職予定日が65歳の前か後か、カレンダーで確認する
- 同居家族がいる場合、世帯構成が非課税判定にどう影響するか窓口で聞く
まとめ|定年後も働くなら、知らないだけで大きな差がつきます
役所も年金事務所も、こちらから聞かなければ教えてくれないことがあります。
働くか働かないかに、正解はありません。年金額を増やしたい方も、手取りと非課税の恩恵を優先する方も、どちらも正解です。大事なのは、両方の道を知ったうえで自分で選ぶこと。
そして数字は毎年変わります。ご自身の生年月日と、お住まいの自治体でご確認ください。
40代・50代からの学び直しが、老後の備えとして確かな力になります。
今日の一歩を、ぜひ踏み出してみてくださいね。

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