「お母さん、家を買おうと思ってるの」——息子さんや娘さんから、ある日そう切り出されたら、なんと答えますか?
うれしい報告のはずなのに、続けて出てきた「ペアローンにしようと思って」という言葉に、思わず固まってしまった。
そんな方もいらっしゃるのではないでしょうか。
ペアローンとは何か、どんな注意点があるのか、ご存じないまま返事をするのは少し不安ですよね。
昔は「家のローンはお父さんの名義で1本」が当たり前でしたよね。
でも今は共働きが当たり前になり、ご夫婦それぞれが2本のローンを組む形が増えています。
借りられる額が増えて、税金の控除も2人分。一見、いいことづくめに見えます。
でも35年、場合によっては40年・50年という長い返済期間の中で、何が起こるかは誰にもわかりません。
今日はボクが、自分の母に話すつもりで「ペアローンのどこに注意すればいいか」をやさしくお伝えします。
頭ごなしに反対しないための伝え方まで、最後にお話しします。
ペアローンとは?夫婦で2本の住宅ローンを組む仕組みをやさしく解説

ここで正確に整理しておきますね。
ペアローンとは、1つの家に対して、夫と妻がそれぞれ1本ずつ、合計2本の住宅ローンを組む方法です。契約書も2通、返済も2本立てになります。
住宅金融支援機構の調査などでも、共働き世帯の収入合算やペアローンの利用は増加傾向とされています。
そして先に申し上げておくと、借入額を増やせる・住宅ローン控除が2人分使える、というメリットは確かにあります。そのうえで、リスクの話に進ませてくださいね。
ペアローン最大のリスクは「離婚」|夫婦がお互いの連帯保証人になる

ペアローンでは多くの場合、夫は妻のローンの、妻は夫のローンの連帯保証人になります(金融機関や商品によって、保証会社が保証する形など取り扱いは異なります)。
これが何を意味するか。もし相手が払わなくなれば、残された側が1人で2本分を背負うことになるのです。
不動産の専門家のところにも、「離婚した元配偶者が、もうローンは払わないと言い出した」という深刻な相談が寄せられているそうです。
家を出た側からすれば「住んでいない家のローンを、なぜ払うのか」という気持ちになるのでしょうね。
では離婚したら連帯保証人から抜けられるのかというと、これがとても難しいのです。
金融機関の承諾に加えて、代わりの保証人を立てるか、単独名義で借り換えるしかありません。実務上、きわめてハードルが高いのが現実です。
もちろん、離婚する予定で結婚する方はいません。だからこそ「35年先まで約束できますか?」という問いが重くのしかかります。
病気・けが・リストラで収入が1人分になったら|団信でどこまで守れる?

どちらかが亡くなった場合は、団体信用生命保険(団信=ローンを組むときに入る、万一のときに残債が弁済される保険)があります。ただし通常の団信で消えるのは、亡くなった本人の分だけです。
最近は「夫婦連生団信」といって、どちらか一方に万一のことがあれば2本とも完済になる商品もあります(住信SBIネット銀行の連生団信、フラット35の「デュエット」など)。
その分、金利が上乗せされる点もあわせて確認したいところですね。
そして、いちばん厳しいのは「2人とも元気に生きているのに、収入が1人分しかない」状態です。
たとえば夫が急に倒れた場合。
病気やけがなら、収入が減るうえに医療費まで重なります。
リストラや会社の業績悪化のように、自分の努力では避けられない事態もあります。返済期間が長いほど、そうした場面に出会う可能性は高まっていきます。
ペアローンで転勤・転職ができなくなる?キャリアの足かせになる理由
2人分の返済を前提に家計を組むと、「今の収入を、2人とも減らせない」状態が何十年も続きます。
望まない転勤を打診されても断りにくい。やりたくない仕事でも、転職に踏み切れない。転居もできない。
そして50代の皆さまなら、きっと実感としておわかりですよね。子育てや親の介護で、どちらかが働き方をセーブしたくなる場面は、多くのご家庭に訪れます。
「家のために、働き方を選べなくなる」。これは数字には出てこないコストですが、じつはいちばん重いのかもしれません。
住宅ローン控除は2人分で本当にお得?ペアローンの税金メリットと落とし穴

夫婦それぞれが住宅ローン控除を受けられる。これは事実で、ペアローン最大のメリットです。
ただし控除率・借入限度額・適用要件は、税制改正で毎年のように変わっています(控除率0.7%、新築は原則13年、省エネ基準への適合要件、子育て世帯等への上乗せ措置など。
いずれも執筆時点の情報です。最新情報は国税庁・国土交通省の公式サイトでご確認ください)。
さらに見落としがちなのが、そもそも所得税・住民税を十分に納めていないと、控除枠を使い切れないという点です。
産休・育休で収入が減る期間は、ここが効いてきます。
ハウスメーカー紹介のFPに住宅ローンを相談する前に、確認したいこと

住宅会社に相談すると、提携のFP(ファイナンシャルプランナー=家計やお金の計画の専門家)を紹介されることがあります。
ここで一つだけ。紹介されたFPの中には、住宅会社からの紹介料やキャッシュバックで報酬を得ているビジネスモデルの方もいらっしゃいます。
もちろん全員がそうではなく、相談料型・保険手数料型など報酬の形はさまざまです。
あわせて、利害関係のない第三者(有料相談型のFPや税理士など)にセカンドオピニオンを求める価値も、とても大きいです。
「制度は変わります」|住宅ローン控除や団信は最新情報の確認を

- 住宅ローン控除の要件・限度額は、年度ごとに変わります
- 団信の内容、連帯保証の扱いは、金融機関・商品ごとに違います
- 返済期間の上限も、商品によって35年・40年・50年とさまざまです
原則は「ネットの情報より、契約書と最新の公的資料」。この記事の数字も、そのまま鵜呑みにせず確かめてくださいね。
「ペアローンを組みたい」と言われたら?息子夫婦・娘夫婦への伝え方

ここがいちばん大事なところかもしれません。
「やめときなさい」と言われると、かえって意地になってしまうのが子どもの心理です。
ボク自身、親から頭ごなしに言われたら「いや、やってやる」と思ってしまう気がします。
ですから、反対するのではなく、質問の形にしてみてください。
「こういうリスクがあるって聞いたけど、2人はどう考えてる?」
そのうえで、「一度、利害関係のない第三者のFPさんや税理士さんに相談してみたら?」と勧めるのが、いちばん角が立ちません。
そして、リスクを理解したうえで組むのなら、それは本人たちの選択です。
不動産の目利きができる方、資産に余裕がある方、しっかり備えを準備できるご夫婦なら、ペアローンが合うこともあります。
まとめ|ペアローンが悪いのではありません。注意点を知って選ぶこと
ペアローンそのものが悪いのではありません。
「2人の安定した収入がずっと続き、関係も良好であること」という、誰にも約束できない前提の上に成り立っている仕組みだと知らないまま契約するのが、もったいないのです。
- 離婚
- 病気・けが
- リストラ
- キャリアの制限
この4つを、契約前にご夫婦で一度でも話し合えているか。そこが分かれ目になります。
親としてできるのは、答えを押しつけることではありません。「決める前に、利害関係のない第三者に相談してみてね」と、ひとこと添えるだけで十分ですよ。
全部やらなくて大丈夫です。1つだけでも伝えられれば、それが第一歩です。まだ何も話せていないという方も、決してあなただけではありませんので、ご安心くださいね。
ちなみに我が家の書類ケースは、住宅ローンの契約書やら保険証券やらで、もはや厚みだけなら辞書と張り合えるほどです。息子さん夫婦の契約書も、きっと同じくらい分厚いはず。だからこそ、中身を一度は一緒に見てみる価値があります。
あなたのご家族はいかがですか? よろしければ、コメントで聞かせてくださいね。

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