
「年金は繰り下げた方がお得」とよく耳にするけれど、本当にそうなのかしら……と迷っていませんか?
年金の繰り下げは最大84%も受給額が増える一方で、注意すべき落とし穴もあるのです。
たしかに繰り下げれば最大84%も増えます。でも、その増えたお金を受け取る82歳のころ、あなたは元気に動けているでしょうか。
この記事では『繰り下げ最強説』の落とし穴と、あえて繰り上げをおすすめする理由を、やさしくお伝えします。ぜひ最後まで読んでみてくださいね。
年金の「繰り上げ」「繰り下げ」とは?受給の仕組みをやさしく解説
年金は65歳から受け取るのが基準です。
この受け取りを遅らせることを「繰り下げ」といいます。
66歳から最大75歳まで遅らせると、年金は最大84%(1.84倍)も増えます。
反対に早くもらうことを「繰り上げ」といいます。60歳まで早めると、1ヶ月あたり0.4%ずつ減り、最大24%の減額になります。
たとえば年金が月15万円の方の場合を見てみましょう。
- 繰り下げると……約27万円
- 繰り上げると……約11万円
こうして見ると「増えるならお得!」と思いますよね。でも、そう単純に言い切れないのです。
年金繰り下げの損益分岐点は82歳|あなたは何歳まで生きる前提?

「損益分岐点」とは、ここまでは繰り上げがお得、これ以降は繰り下げがお得という分かれ目のことです。
額面(税金などを引く前の金額)で考えると、損益分岐点はだいたい81〜82歳ごろになります。
つまり、82歳より長生きすれば繰り下げが得、それより早ければ繰り上げが得、というわけです。
気になるのは平均寿命ですね。厚生労働省のデータでは、男性が約81歳、女性が約87歳です
(※簡易生命表の数値です。最新の情報は厚労省の公式サイトでご確認ください)。
女性は長生きの方が多いので、「だから繰り下げが得」と言われるのです。
年金の「繰り下げ最強説」に潜む2つの危険
でも、ここには2つの危険がひそんでいます。
危険①:元気に動けるのは70代まで
「健康寿命」という言葉をご存知ですか?
自分で元気に動ける年齢の平均のことです。男性は約72歳、女性は約75歳とされています。
82歳でお得になっても、旅行も外食も自由にできない体では、少しさみしい気もしますよね。
危険②:受給額が増えると税金や保険料も増える
年金額が増えると、所得税・住民税・介護保険料・健康保険料の負担も増えていきます。
せっかく「損して得取れ」と思ったのに、その逆になってしまうこともあるのです。
年金繰り上げをすすめる理由①:健康とお金のバランス
もし「1億円あげます。ただし95歳になります」と言われたら、あなたは受け取りますか?
きっと断りますよね。
ベストセラー書籍『DIE WITH ZERO』では、若いうちに使うお金ほど価値が高いと説かれています。
長生きの家系ではない方、持病がある方は、体が元気に動くうちに使うという選択肢もあるのです。
早めに年金を受給すれば貯金を減らさずにすみ、心の安心にもつながります。
年金繰り上げをすすめる理由②:NISAという手も

資産運用ができる方なら、早めに年金を受け取り、使わない分をNISA(少額投資非課税制度)で運用する方法もあります。
NISAは増えても税金がかからないのが強みです。年金のように増えたぶん税金や保険料が増える、という心配がありません。
「資産はあるけれど、お金持ちには見えない」状態をつくれるのです。
ただし運用にはリスクもあります。無理のない範囲で考えてくださいね。
→NISAを始める簡単3ステップは、YouTube動画で解説しています!
年金繰り上げをすすめる理由③:思い出には「複利効果」がある
『DIE WITH ZERO』には「やっておけばよかった、を減らそう」という教えがあります。
お子さんやご両親と過ごせる時間は、今だけです。お金はまた稼げても、家族と一緒にいられる時間は取り戻せません。
思い出は一度作れば、ずっと心の中で楽しめます。高級品の喜びは長続きしませんが、思い出は違うのです。
家族との時間や旅行、自己投資にお金を使う価値は、とても大きいと思いませんか。
年金繰り上げをすすめる理由④:働いている人・心が限界の人

給料がある方は、年金を生活費に回さず、思い出や自己投資に使えます。
ここで注意したいのが「在職老齢年金」です。
給料と年金の合計が基準額を超えると、超えた分の一部の年金がカットされる制度です。
この基準額は毎年変わります。令和7年度は51万円、令和8年度は65万円です。ボーナスも含まれる点に注意してください(※最新額は日本年金機構でご確認ください)。
また、今の仕事で心身が限界という方は、繰り上げて生活を安定させる選択肢もあります。
60歳で離職すれば失業保険(雇用保険の基本手当)の対象になりますね。
一方で、繰り上げた年金と失業保険は同時に受け取れず調整があります。この点も確認しておきましょう。
まとめ|年金の受給時期は「いつから・いくら」だけで決めない
「繰り下げれば84%増える」という言葉だけで判断するのは、少し危険かもしれません。
大切なのは「いつまで元気に使えるか」という健康寿命の視点です。
お金を増やすことより、元気なうちに家族や思い出に使うことにこそ、大きな価値があるのではないでしょうか。
とはいえ、寿命も働き方もお金の余裕も、人それぞれです。最新の制度を確認しながら、あなたに合った年金の受け取り方をぜひ選んでみてくださいね。
※ 本記事の年金・税・社会保険に関する数値(在職老齢年金の支給停止基準額、平均寿命・健康寿命、減額率等)は制度改正や生年月日により異なる場合があります。特に在職老齢年金の基準額は毎年度改定されます。実際の判断にあたっては日本年金機構や最新の公的資料、専門家にご確認ください。

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